空き家・相続の物件を民泊に活用するべき?

2025.06.25

相続で取得した実家や、長年空き家のまま放置している戸建・マンションを「資産運用として何かに使えないか」と考える方が増えています。特に近年、インバウンド(訪日外国人旅行客)の増加や「長期滞在型の旅行スタイル」が人気を集めており、空き家を民泊として活用することで、高い収益性が期待できるケースも少なくありません。本記事では、空き家・相続物件の民泊化を検討する際に押さえておきたい基本的なポイントや必要な準備、メリット・デメリットをまとめ、実際に運用を始めるまでに理解しておくべき事項を整理します。

 

民泊とは?仕組みと法的な位置づけ

1. 民泊の定義

民泊(みんぱく):個人や法人が所有する住宅・マンション・空間を宿泊施設として有料提供するサービスの総称。
従来の「旅館業」とは異なり、比較的簡易な手続きで始められるため、空き家や部屋貸しを手軽に活用できる点が特徴。まず民泊の運営に関して必要な法律と注意点を簡単にまとめておきます。

 

旅館業法

民泊を提供する際、年間宿泊日数が一定以下(年間180日以下)の場合は「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)」の届出のみで運営可能。
年間180日を超えて運営する場合は、従来の「旅館業法」に基づく許可が必要。許可区分は以下のとおり:

・簡易宿所営業:比較的小規模施設(部屋数やベッド数に制限あり)向け。
・下宿営業:居住者向け貸与型の下宿施設。空き家をシェアハウス形式で貸し出す場合などに該当。
・ホテル営業・旅館営業:客室数やサービス内容が大規模・本格的な宿泊施設として扱われる場合。

 

住宅宿泊事業法(民泊新法)

・対象物件:住宅用途の建物(戸建て、マンション、アパートなど)。
・運営日数の上限:年間180日を超えて営業する場合は、事業法に基づく届出ではなく、旅館業法の許可が必要。
・管轄官庁:各市区町村の保健所や保健福祉センターが管轄。

主な届出要件:
・届出書の提出(所在自治体に対して)。
・消防法令遵守(避難経路の確保、消火器の設置、スプリンクラー設置など、必要に応じて消防署へ届出や点検)。
・近隣住民への説明・合意(迷惑行為や騒音問題を避けるため、自治体により「近隣へのポスター掲示」などの周知を義務づけるケースもある)。
・通報体制の整備(緊急時に保健所や警察、消防への連絡が速やかに行えるような体制)。
・事業者責任者の設置(登録管理者などを定め、常時連絡が取れる状態にする)。

特別地域(用途地域)による制限
・都市計画法で定める用途地域により、住宅地や商業地、工業地域などで民泊の可否が異なる。
・たとえば「第一種低層住居専用地域」や「第二種低層住居専用地域」は、原則として旅館業法許可がない住宅宿泊事業の営業ができない場合がある。
・事前に役所の都市計画課や建築指導課で「民泊(住宅宿泊事業)を行ってよい用途地域か」を必ず確認。

 

 

旅館業法と民泊新法の違い(簡単まとめ)

項目

旅館業法(旅館業)

民泊新法(住宅宿泊事業法)

対象

ホテル・旅館・簡易宿所等

住宅を利用した民泊

営業日数制限

なし(通年営業可)

年間180日まで

許可・登録

都道府県知事等の「許可」

行政への「届出」で可

主な要件

施設構造・設備・衛生基準

住宅であること・管理規約等

管理体制

管理者常駐が原則

管理業者委託も可能

用途地域制限

地域により制限あり

原則、用途地域問わず可能

消防・安全基準

厳しい

簡略化されている部分も

代表的な形態

ホテル、旅館、簡易宿所等

Airbnbなどの個人宅民泊

 

旅館業法:従来型のホテル・旅館など、厳しい基準や許可が必要。営業日数の制限はありません。

民泊新法:Airbnb等の「住宅」を使った短期貸しが対象。年間180日以内、届出制で参入しやすいが日数制限あり。

ごく簡単にまとめると、「本格的な宿泊業=旅館業法」「副業や個人でもやりやすい住宅民泊=民泊新法」となります。

 

 

2. 民泊の仕組み

 

ゲストの流れ
・旅行者が民泊仲介サイト(Airbnb、Booking.comなど)で宿泊先を検索。
・希望条件に合う物件を見つけ、オンラインで予約・決済。
・ホスト(物件所有者・管理者)は「チェックイン方法」「ハウスルール」を案内し、宿泊当日から滞在を提供。
・滞在終了後、ゲストが清掃を行ったか、問題なくチェックアウトしたかをホストが確認。
・ホストは宿泊料を民泊仲介サイト経由で受け取り、サイト手数料3~15%を差し引いた残金を受領。記事の後半で詳細に説明しています。

 

ホスト側の管理業務
・予約管理・問い合わせ対応:ゲストからの問い合わせや特別リクエストに対応。
・チェックイン/チェックアウト業務:鍵の受け渡しや室内案内を行う(代行業者を利用する場合も多い)。
・清掃・備品補充:基本的に1組ごとに清掃が必要。洗濯機やクリーニング業者に依頼するか、自身で清掃を手配。
・設備・家電・消耗品の管理:Wi-Fiやエアコン、調理器具、寝具など、ゲストが快適に過ごせるよう設備を維持・補充。

 

空き家の民泊化に必要な設備・備品

空き家や相続物件を民泊として運用する際は、「旅館業法許可」と「住宅宿泊事業法届出」いずれにせよ、以下の設備・備品が必要になります。

 

【必須のもの】

1. 家具・家電・インテリア

  • ベッド or 布団(人数分・寝具一式:シーツ・カバー含む)
  • テーブル・椅子(ダイニング・リビング用、最低限)
  • 冷蔵庫
  • 電子レンジ
  • エアコン or 扇風機・ヒーター(いずれかは必須/最低限の空調)

2. キッチン・食器類

  • 食器(皿・コップ・カトラリー:人数分+予備)
  • 調理器具(フライパン、鍋、包丁、まな板等)
  • ガスコンロまたはIHコンロ

3. バス・トイレまわり

  • タオル類(バスタオル・フェイスタオル:人数分+予備)
  • シャンプー・リンス・ボディソープ・ハンドソープ
  • トイレットペーパー・ティッシュペーパー
  • ゴミ箱・ゴミ袋

4. 清掃・衛生備品

  • 掃除機またはフロアワイパー
  • 雑巾
  • ハンドモップ
  • 消毒用アルコールスプレー

5. 安全設備

  • 消火器・火災報知器(設置義務あり、特に旅館業法の場合は必須)
  • 避難経路図

6. 通信環境

  • Wi-Fiルーター・インターネット回線

7. その他備品

  • 鍵(キーボックスまたはスマートロック)

 

【あれば良いもの/あると好印象なもの】

1. 家具・家電・インテリア

  • ソファ・ローテーブル
  • テレビ・DVDプレーヤーなどエンタメ機器

2. キッチン・食器類

  • オーブントースター
  • 炊飯器
  • 電気ケトル
  • 調味料(必要最低限のもの:塩、醤油、油など)
  • キッチンペーパー・洗剤

3. バス・トイレまわり

  • 歯ブラシ・歯磨き粉
  • ヘアドライヤー
  • バスマット

4. 清掃・衛生備品

  • 使い捨てスリッパ
  • マスク

5. 安全設備

  • 一酸化炭素警報器
  • 非常灯
  • 温度ヒューズ付きコンロ

6. 通信環境

  • 有線LANポート

7. その他備品

  • 収納家具・ハンガーラック
  • ランドリー設備(洗濯機・乾燥機)
  • 傘、靴べら、案内ファイル(周辺マップや利用案内)

 

★ポイント

  • 必須設備は「安全・衛生・最低限の生活が可能」であることを基準に選定しています。
  • あれば良いものは、競争力UPやゲスト満足度向上につながります。
  • 旅館業法か民泊新法(住宅宿泊事業法)かで若干義務の内容が異なりますが、原則上記の「必須」はどちらでも基本カバーすべき内容です。

 

民泊化できるのはマンション?戸建?

1 マンションでの民泊化

管理組合規約・使用細則の確認
・マンションを民泊化する際は、「管理組合の規約」や「使用細則」で「民泊利用の可否」が定められているかを必ずチェック。
・たとえば「賃貸契約者のみ居住可」「住戸を第三者に貸し出してはいけない」「夜間騒音禁止」などの規定がある場合、民泊営業が禁止されているケースがある。
・事前に管理組合理事会議事録を確認し、「民泊に関する規定変更が必要か」「周辺住戸への告知・説明義務があるか」を確認。

住民トラブルへの配慮
・騒音問題:入居者が多数の外国人旅行者となると生活リズムが異なり、夜遅くまで出入りがあった場合、近隣への配慮が欠かせない。あらかじめ「夜10時以降の出入り禁止」「共同廊下での大声禁止」などを掲示しておく。
・共用部のマナー:ゴミ出しルールやエレベーター内での喫煙禁止など、日本特有の細かなルールを理解してもらうために、「マナーガイド」を各室に常備するとトラブルを防げる。
・保険加入:万一の事故やトラブルに備え、施設賠償責任保険や宿泊者賠償責任保険に加入する。

物件の構造的制限
・防災設備・避難経路:高層階の場合、非常用エレベーターが使用できない場合もあるため、避難計画を明確に。消防署や管理組合と連携して、防災訓練を行うことが求められる。
・騒音・遮音性能:マンションは上下階の生活音が問題になりやすいため、寝具や椅子の底に防振パッドを貼る、ラグやカーペットを多用して音漏れを抑制するなどの工夫が必要。

 

2 戸建での民泊化

立地・環境面での利点
・独立性が高い:戸建物件は隣室・上下階を気にせず運営できるため、音や人の出入りによるトラブルが比較的少ない。
・広い庭や駐車スペース確保:ガーデンバーベキューを楽しめる庭や駐車スペースをアピールポイントにできる。長期滞在者が車を利用する場合に好まれやすい。
・一棟貸しのメリット:複数名で貸し切って利用できるため、家族旅行やグループ旅行の需要が高い。広いキッチンやリビングがあると評価が上がりやすい。

デメリット・留意点
・生活インフラの整備:戸建は場所によっては駅や観光地から遠い場合があり、「送迎サービスの提供」や「レンタカー手配サポート」を検討。
・管理負担の大きさ:人里離れたエリアの戸建は、不在時のイタズラや窃盗リスクが高まるため、スマートロックや監視カメラを設置したり、定期的に管理者が現地を巡回したりする必要がある。
・光熱費負担:広い戸建では冷暖房費がかさむため、「エアコンの最適運転設定」「床暖房のタイマー管理」といった運用ルールを明確化し、ゲストにも案内する。

 

申請費用・コスト

1 許認可/届出に関する費用

住宅宿泊事業法の届出(年間180日以内の場合)
・届出手数料:各市区町村によって異なるが、おおむね1万円前後。届出書提出後、審査を経て「住宅宿泊事業者番号」が交付される。
・消防署審査費用:簡易宿泊事業(届出)では、消防署の立入検査は原則不要だが、「防火責任者の資格証」「避難経路図」などの書類提出が求められる場合がある。書類作成費用や消防法令に適合させるための改修費がかかる可能性がある。

旅館業法許可(年間180日超/年間通年運営の場合)
・許可申請料:各都道府県や保健所により異なるが、3~5万円程度が一般的。
・施設基準適合工事費用:
 防火設備設置(ドア・スプリンクラー・消火器など):数十万円~数百万円。
 給排水・トイレ・洗面所の増設・改修:構造改修が必要な場合は数十万円~。
 換気設備・避難経路確保:建築業者への外注が必要。
・診断・検査費用:
 設備検査(消防・保健所):別途書類作成費用や検査立会い費用がかかる場合がある。
 食品衛生責任者の設置(飲食提供がある場合):講習(約1万円)の受講費用が発生。

2 物件改修・設備導入コスト

空き家改修費用
・内装リフォーム:クロス張替え、フローリング補修、畳→フローリング変更などで50万~200万円以上の費用がかかる場合がある。
・キッチン・バスルームの改修:設備機器交換、ユニットバスの新設、キッチンカウンター設置・換気扇設置などで50万~150万円程度。
・耐震補強・断熱改修:古民家や築年数が古い場合、耐震診断~耐震補強で100万~300万円以上の工事が必要になるケースがある。断熱材の充填やサッシ交換にもコストがかかる。

家具・家電・備品
・ベッド一式:1組あたり約5万~10万円(マットレス+ベッドフレーム)。
・キッチン家電一式(冷蔵庫・電子レンジ・炊飯器など):トータルで約10万~20万円。
・洗濯機・乾燥機:計約10万~15万円。
・家具・インテリア(テーブル・ソファ・収納家具など):約20万~50万円。
・Wi-Fiルーター・ブロードバンド回線初期工事:約3万~5万円(光回線の場合)。

ランニングコスト
・光熱費・水道費:負荷の大きい季節は電気代が上がりやすい。冬季は暖房費、夏季は冷房費を見込んでおく。
・清掃費用:1回あたりの清掃外注費用は約1万~3万円(広さや状態による)。
・消耗品補充費用:シャンプー・リンス・シーツ・タオル・トイレットペーパーなどの補充は月1~2万円程度。
・民泊仲介サイト手数料:Airbnbなど仲介プラットフォームを使う場合、宿泊料の約3~15%が手数料として差し引かれる。

 

集客の方法

1 民泊仲介プラットフォーム

Airbnb(エアビーアンドビー)
・メリット:国内外で最大規模の利用者数を誇るため、露出力が高い。
・手数料:ホスト手数料として宿泊料金の約3~5%(プランにより異なる)、ゲスト手数料として約10~15%が課される。

機能:
・高品質な写真掲載や詳細なアメニティ表示が可能。
・ダイレクトメッセージ機能でゲストとのやりとりがスムーズ。
・ホスト向けダッシュボードで予約管理、清掃スケジュール、収益レポートを一元管理。

Booking.com(ブッキングドットコム)
・メリット:ホテルやホステルとも同一プラットフォーム上で並列表示されるため、国内外の旅行者に幅広くアプローチできる。
・手数料:宿泊料金の15~18%程度(オプションでコミュニケーションシステムを利用すると手数料が変動)。

機能:
・多言語対応の予約フォーム・決済システム。
・口コミ/レビューを通じて信頼性を向上させやすい。
・直前割引や長期滞在割引など、柔軟な料金設定が可能。

Expedia・Agoda・楽天トラベル など
・メリット:訪日外国人だけでなく、国内客にもリーチ可能。
・注意点:各プラットフォームによって手数料割合・決済方法が異なるため、複数掲載する場合は価格設定や在庫管理を慎重に行う必要がある。

 

2.直販/自社サイト

・メリット:プラットフォーム手数料不要。ファン獲得ができれば、リピーターからの直接予約で利益率が上がる。
・デメリット:集客コスト(SEO対策・広告費用)や決済システム導入費(StripeやPayPalなど)がかかる。

SNS活用(Instagram・Facebook・Twitterなど)
・メリット:施設の雰囲気をビジュアルで訴求しやすい。リール動画やストーリーズでリアルタイムな情報発信が可能。
・デメリット:フォロワー数を増やすには時間と工夫が必要。ハッシュタグ戦略や投稿頻度のコントロールなど、SNSマーケティングのテクニックが求められる。

3.民泊仲介サイト以外の広告
・地元観光協会への登録:地域の観光協会や商工会に宿泊施設として登録し、パンフレットやWebサイトで紹介してもらう。
・フリーペーパーや生活情報誌:地域に密着した媒体に広告掲載し、高齢者や地元住民向けマーケティングを実施。

・グーグル広告・Facebook広告:ターゲットを「訪日観光客」「国内旅行者」に絞り、エリア・興味関心を指定して広告配信。費用対効果を分析しながら運用する。

 

民泊の問題点・課題

1 法令遵守・近隣トラブルのリスク

騒音・マナー問題
・複数人グループや若者層のゲストが夜遅くまで出入りしたり、大声で騒いだりするケースがあり、近隣住民から苦情が寄せられることがある。

対策例:
・夜10時以降は共用部を含め「大声禁止」「外出は静かに」といったルールを明確に掲示。
・騒音測定アプリを設置し、異常値を検知したら管理者へ自動通知するシステムを導入。

 

参考:RentEye-ショートステイ用騒音監視システムおよびパーティー検知器

2.違法営業・届出漏れリスク

・「旅館業法許可が必要な運営日数を超えてしまった」「用途地域で民泊営業が禁止されている場所で営業してしまった」などのケース。

対策例:
・年間営業日数をカレンダー管理し、180日を超えないよう自動的に予約受付を停止する仕組みを導入。
・必要な届出・許可を行い、定期的に法改正情報をチェックする。

 

1. 旅館業法違反の場合

  • 無許可営業(許可を取らずに旅館業を行った場合)
    • 罰則:6か月以下の懲役または100万円以下の罰金(旅館業法第10条)
    • さらに、情状が重いと「営業停止」「施設の使用禁止」などの行政処分もあります。
  • 営業日数超過
    • 住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出だけで、実際は年間180日超営業していた場合、旅館業法違反(無許可営業)とみなされ、同様の罰則対象になります。

 

2. 民泊新法(住宅宿泊事業法)違反の場合

  • 届出をせずに住宅宿泊事業を営んだ場合
    • 罰則:6か月以下の懲役または100万円以下の罰金(住宅宿泊事業法第60条)
  • 条例・用途地域の違反(都市計画法・建築基準法違反)
    • 用途地域で禁止されている場所(第一種低層住居専用地域など)で営業した場合、建築基準法や都市計画法に基づき是正命令や罰金(最大100万円以下)が課される場合があります。

 

3. よくある違反例とリスク

違反ケース

主なリスク

罰則・ペナルティ例

無許可で民泊(許可・届出なし営業)

行政指導、刑事罰

懲役・罰金・営業停止命令

180日超の営業(民泊新法の枠超え)

無許可旅館業とみなされる

同上

用途地域違反

行政指導・是正命令

営業禁止・罰金

消防設備未設置

立入検査・命令

行政指導・罰金

 

補足

  • 行政の立ち入り調査や近隣住民からの通報がきっかけで発覚することが多いです。
  • 実際に罰則が適用されるかどうかは、状況や是正の有無、悪質性などによって判断されますが、「バレたらアウト」と認識しておくべきです。

 

結論:違法営業や届出漏れは、刑事罰(懲役・罰金)や行政処分(営業停止・使用禁止)を受けるリスクが十分にあります。法令順守と事前確認が必須です。

 

税務申告・所得計上の煩雑さ

・個人で民泊を行う場合、雑所得または事業所得として申告が必要。収支計算を適切に行わないと、後で税務調査のリスクが生じる。

対策例:
・会計ソフト(弥生会計・freeeなど)を導入して家賃収入–経費を自動管理。
・年1回の確定申告前に税理士へ相談し、「青色申告」適用を検討することで節税効果を得る。

 

維持管理コスト・運営負担

 

清掃・メンテナンスの手間
・民泊運営では「ゲスト入れ替えごとの清掃・リネン交換」が必須。自分で行うと時間コストが大きいため、清掃代行業者を手配する場合が多いが、業者選定や日程調整などの手間がかかる。

 

対策例:
・清掃代行業者と定期契約を結び、毎週曜日固定で清掃を行うスケジュールにする。ある程度物件の立地など決まっているならランサーズなどを活用もあり
・リネン交換サービスを提供するサブスクリプション型のリネン業者を利用し、布団カバーやタオルの管理をアウトソースする。

空き家ならではの老朽化・劣化リスク

・長期間空き家だった物件は、シロアリ被害や雨漏り・給排水管の詰まり、壁・床のひび割れなどが進行している場合が多い。ゲスト滞在中にトラブルが起きると大きな損害につながる。

対策例:
・事前にホームインスペクション(住宅診断)を実施し、構造的な問題を洗い出す。必要に応じて耐震補強や断熱工事を行う。
・定期的に空調・給排水・給湯等の設備点検を行い、故障・漏水リスクに備える。

 

感染症や自然災害リスク

・COVID-19のような感染症拡大時には、キャンセル対応や衛生対策強化が必要。

・地震や台風などの自然災害リスクが高い地域では、*「緊急避難場所の案内」「防災マニュアルの設置」「宿泊キャンセルポリシーの明確化」*などが求められる。

対策例:
・ゲストへのキャンセル規定を明文化し、感染拡大など緊急時の対応策を事前にプラットフォーム上に掲載。

・防災備品(懐中電灯・救急セット・非常食・飲料水など)を用意し、各部屋に避難マニュアルを設置。

 

 

不泊、キャンセルリスク

・連絡なしキャンセル(ドタキャン)、キャンセル手数料の徴収、※前もってクレジット決済。

・備品破損、汚損の支払いや、部屋が使えなくなった時の補償や宿泊予定客に対する補償などについて。(※カードでデポジットまたは保険をかける)

 

民泊を成功させるポイント

1.物件選定とコンセプトづくり

・ターゲット客層を明確化:インバウンド向けなのか、ファミリー層向けなのか、ビジネス客向けなのか。それぞれが求める設備・アメニティは異なるため、コンセプトに合わせたインテリアや備品を揃える。
・地域の魅力を最大限にアピール:周辺観光地・飲食店・交通アクセス・スーパーなどの利便性をチェックし、ゲストにわかりやすく案内資料を作成。

2.料金設定と収支シミュレーション

・シーズン別料金設定:繁忙期(ゴールデンウィーク、お盆、年末年始など)には高めに設定し閑散期には割引を実施。
・最低宿泊日数の設定:連泊客向けに「2泊以上で◯%オフ」「1週間以上で◯%オフ」などを導入し、稼働率を安定化させる。

収支シミュレーション:
・収入側:実際の市場相場を参考にした1泊あたりの料金×年間稼働率(50~70%を想定)で試算。
・支出側:固定費(ローン返済、光熱費、インターネット費用、保険料)+変動費(清掃費・消耗品費・プラットフォーム手数料)。

3.差別化とブランディング

 

・インバウンド向けに通訳アプリや多言語マニュアルを用意:簡体字中国語・繁体字中国語・英文・ハングルなど、主要な言語で案内を用意する。
・独自のリピーター特典を用意:2回目以降の宿泊で割引や地元特産品のプレゼントなど、リピート客を獲得する仕組みを作る。
・SNSで「泊まってみた」写真を拡散してもらう仕掛け:ゲストがSNS投稿をすると、次回割引クーポンをプレゼントするなど、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用。

4.清掃品質とゲスト対応

 

・清掃チェックリストを標準化:「シーツの汚れ」「トイレの水垢」「浴室のカビ」「キッチンの油汚れ」など、見落としやすい箇所をまとめ、代行業者や自身での清掃段階で確実にクリアする。
・迅速な問い合わせ対応:24時間以内に返答する体制を整え、不具合があれば速やかに対処することで高評価レビューを得やすくなる。

5.法令遵守と地域協力

・最新の法改正情報を常にチェック:住宅宿泊事業法や旅館業法だけでなく、消防法・建築基準法の変更にも注意。4法の参照元リンク追記
・近隣住民とのコミュニケーション:民泊開始前には自治会や管理組合に挨拶を行い、「年間◯日以内の営業」「消火器・防災計画を整備済み」「騒音測定アプリを導入」など、事前に理解を得ておくことでトラブルを未然に防ぐ。

 

まとめ──空き家・相続物件を民泊に活用すべきか?

空き家や相続物件を「ただ所有しているだけ」では固定資産税や維持管理コストがかさむ一方で、うまく民泊化すれば「資産を稼働資産化して収益を生む」可能性があります。ただし、以下のポイントをよく検討したうえで、採算が取れるかを判断することが不可欠です。

物件の立地・需要の有無
・観光地やビジネス街に近い場所ならインバウンドやビジネス出張客を取り込みやすい。
・農村部や過疎地域の場合、稼働率が低く収益化が難しい可能性がある。地域の宿泊需要を事前に調査することが重要。

法令遵守と初期投資額
・住宅宿泊事業法の届出のみで始められる場合と、旅館業法の許可が必要な場合で、手続きや改修工事にかかる時間と費用は大きく異なる。
・「年間180日以内」の運営にとどめるか、「通年営業」を目指すかによって、初期投資の規模を慎重に見積もる。

管理体制とランニングコスト
・自身で清掃や問い合わせ対応を行うのか、委託業者にまるごと任せるのか。代行コストをどこまで許容するか。
・近隣トラブルやゲストクレームが発生した場合の対応フローをあらかじめ策定しておくことが、運営リスクを減らす。

運営プラットフォーム選びと差別化戦略
・Airbnb・Booking.comなどプラットフォームへの掲載はマストだが、同時に自社サイトやSNSでの告知を組み合わせることで、手数料負担を軽減しつつ、リピーター養成を図る。
・競合物件との差別化として、長期滞在割引や多言語サポート、防災備品の充実など、他が真似しにくい強みを打ち出す。

 

総じて、「空き家・相続物件を民泊に活用することで収益化するかどうか」は、立地条件・初期投資額・管理体制・法令遵守・差別化戦略といった要素を複合的に検討したうえで判断すべきです。単に「民泊を始めれば収益が上がる」という甘い見通しだけでなく、実際にかかるコストと労力をシビアに洗い出し、収支シミュレーションを作成してから取り組むことを強くおすすめします。民泊の成功は、物件の魅力だけでなく、運営するホストの「汗と工夫」によって初めて実現できるものだからです。

 

 

 

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本記事は、いえたった関西編集部が執筆・監修しています。
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